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韓国大法院は、2026年6月25日、外国SaaS企業と韓国大企業との間のソフトウェア・サービス契約において支払われた対価の所得区分が争点となった事件で、仮に当該対価にソフトウェア使用対価が一部含まれているとしても、契約の本質的部分が「サービス提供」にある場合には、これは使用料所得ではなく事業所得に該当するとした原審の判断をそのまま維持しました(上告棄却)。法務法人(有限)和友は、米国SaaS企業を代理し、第1審での敗訴を覆して控訴審で全面勝訴したのに続き、大法院において最終的な勝訴を確定させました。
本判決は、デジタルサービス、SaaS、データベース基盤のビジネスモデルにおいて発生するクロスボーダー支払金の所得区分および源泉徴収実務に、重要な指針を示すものです。特に、契約書に「ライセンス(License)」または「ライセンスフィー(License Fee)」という表現が用いられていたとしても、取引の実質がサービス提供である場合には、使用料所得として課税することはできないことを明確にした点で、大きな意義があります。
1. 事案の背景および争点
2. 裁判所の判断
ア. 第一審裁判所の判断‐課税当局勝訴
イ. 第二審(控訴審)裁判所の判断‐原告(米国法人A社)勝訴
ウ. 大法院の判断‐上告棄却、原告の最終勝訴確定
3. 示唆
1. 事案の背景および争点
米国SaaS企業であるA社(以下「A社」といいます)は、韓国大企業であるB社(以下「B社」といいます)との間で「統合およびサービス契約(Integration and Services Agreement)」を締結し、発信者識別、スパム遮断、ディレクトリ検索サービス(以下「WPサービス」といいます)をB社のスマートフォンのネイティブアプリに統合し、エンドユーザーが利用できるようにしました。A社は、オブジェクトコード(object code)形式のクライアントプログラム(以下「Client」といいます)をB社に提供し、B社は2016年から2021年まで毎年定額の対価を支払いました。
B社は、同対価を韓米租税条約上の「使用料所得」と考え、制限税率15%を適用して法人税を源泉徴収し、納付しました。しかし、A社は、同対価は韓国国内に恒久的施設を有しない外国法人の「事業所得」に該当し、韓国国内では課税されないとして更正請求を行いました。これに対し、課税当局が更正請求を拒否したため、A社は当該拒否処分の取消訴訟を提起しました。
本件の争点は、韓国内企業が外国SaaS企業に支払ったソフトウェア・サービス関連対価を、(i) 無形資産(ノウハウ・著作権)の使用対価である「使用料所得」とみるべきか、それとも、(ii) 役務提供の対価である「事業所得」とみるべきかという点にありました。使用料所得に該当する場合は15%の源泉徴収の対象となりますが、事業所得に該当する場合は、恒久的施設がない限り、韓国の課税権は及びません。
2. 裁判所の判断
ア. 第一審裁判所の判断‐課税当局勝訴
第一審は、▲ 契約書が対価を明示的に「ライセンスフィー(License Fees)」と定めていること、▲ 不特定多数向けの汎用ソフトウェアではなく、B社のスマートフォンに合わせて開発・改変されたソフトウェアであること、▲ A社がテスト、修正、保守を継続して提供していたこと、▲ スマートフォンが一部海外で生産されていたとしても、当該技術が韓国内のスマートフォン製造・サービス提供に使用された以上、「国内使用」に該当すること等を理由として、当該対価を、B社が使用したノウハウ・技術(Whitepages Technology)の利用対価である使用料所得と判断し、原告の請求を棄却しました。
イ. 第二審(控訴審)裁判所の判断‐原告(米国法人A社)勝訴
控訴審は、第一審の結論を覆しました。裁判所は、▲ B社がA社の技術そのものを導入・使用したのではなく、発信者識別・スパム遮断機能が実装されたスマートフォンを販売する目的で、A社にエンドユーザー向けサービスを提供させたこと、▲ 実際にデータベースサーバーを運用し、発信者識別・スパム遮断を行う主体はA社であること、▲ スマートフォンに搭載されたClientは、単独で販売・使用されない汎用プログラムであり、エンドユーザーがサービスにアクセスするための「ユーザーインターフェース」にすぎないこと、▲ B社の要望による変更は、統合のための技術的変更にとどまり、新たなソフトウェアの創作とみることは困難であること、▲ A社が独自のデータベース・ノウハウを保有していたとしても、これをB社に「移転(伝授)」したのではなく、自ら役務を遂行したこと、▲ アプリのインストールは、サービス提供のための技術的過程にすぎず、複製権・頒布権の独自の行使等、著作権の商業的利用とはみられないこと、▲ 対価が生産・販売数量に連動するランニング・ロイヤルティではなく、毎年定額で支払われていたこと等を総合し、当該対価は使用料ではなく、役務(サービス)の対価であって、事業所得に該当すると判断しました。
さらに控訴審は、仮に対価の中に著作物の利用に関する部分が一部含まれているとしても、契約の本質がエンドユーザーに対するサービス提供にあり、Clientの使用はその技術的前提にすぎない以上、対価全体をサービス提供の対価とみるべきであり、Clientに関する対価のみを別途分離・算定する根拠もないと判断しました。
ウ. 大法院の判断‐上告棄却、原告の最終勝訴確定
大法院(第1部、主審・徐慶桓大法官)は、2026年6月25日、課税当局の上告を棄却し、同控訴審判決をそのまま確定させました。上告審において、課税当局は、▲ 契約第5.1条が対価を「License Fee(ライセンスフィー)」と明示していること、▲ B社が明示的にライセンスの付与を受けて無形資産を「使用」したこと、▲ 「使用」の意味に関する大法院2021ドゥ59908全員合議体判決の法理等を根拠として、使用料所得に該当すると強く争いました。しかし、大法院は、取引の実質がサービス提供にあるとした原審の判断をそのまま維持しました。これにより、第一審で敗訴した後、控訴審・上告審を経て、納税者の最終勝訴が確定しました。
3. 示唆
本判決は、ソフトウェアが含まれるクロスボーダー取引であっても、対価の本質的部分が「サービス提供」に関するものであれば事業所得に、これに対し「技術の移転・使用」に関するものであれば使用料所得に区分されるという原則を、大法院レベルで再確認したものです。特に、契約書に「ライセンス」という表現が用いられていても、その実質が単なるサービスへのアクセス手段にすぎない場合には、実質課税の原則上、これを使用料所得とみることはできないことを明確にした点に大きな意義があります。
これは、外国SaaS・プラットフォーム企業と韓国内企業との間の契約において、契約書の文言、対価の算定方法、技術提供の範囲によって、税務上の所得区分および課税結果が大きく異なり得ることを示唆しています。韓国内企業としては、SaaS・サブスクリプション型サービス、データベース連携サービス等に対して支払う定額対価について、慣行的に使用料として源泉徴収を行ってきた場合、その適正性を再点検し、更正請求による納付済み税額の還付可能性および今後の源泉徴収義務の有無を綿密に検討する必要があります。
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