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自己株式の消却を義務化する現政権の第3次商法改正案が2026年2月23日に法制司法委員会を通過し、翌24日には本会議で可決されており、間もなく施行される予定です。自己株式の取得は、会社の利益を株主に現金で還元するという点で代表的な株主還元策と認識されていますが、一方で大株主の支配力強化の手段として悪用されているという批判も少なくありませんでした。
これを受け、第3次商法改正案は上場・非上場会社を問わず自己株式の消却を義務化することで、一般株主を保護し、資本充実の原則を図ることを目的としています。
本ニュースレターでは、第3次商法改正案(以下「改正商法」)の詳細な内容を紹介し、その示唆および会社の対応策について検討します。
1. 自己株式に関する現行商法及び資本市場法の主要内容
2. 改正商法の主要内容①:自己株式の法的地位の明確化
3. 改正商法の主要内容②:自己株式の消却義務化
4. 改正商法の主要内容③:例外的な自己株式の保有・処分が認められる事由の規定
5. 改正商法の主要内容④:自己株式の処分に対する新株発行規定の準用明示等
6. 改正商法の主要内容⑤:自己株式の消却手続の簡素化
7. 自己株式消却義務化の波及効果と示唆
1. 自己株式に関する現行商法及び資本市場法の主要内容
現行商法は、配当可能利益の範囲内において株主総会の決議による自己株式の取得を全面的に認めており(商法第341条)、その他にも、①会社の合併または他社の営業全部の譲受けによる場合、②会社の権利を実行するにあたってその目的を達成するために必要な場合、③端株処理のために必要な場合、④株主が株式買取請求権を行使した場合など、特定目的による自己株式の取得も可能です(商法第341条の2)
商法は、自己株式の取得が配当可能利益の範囲内で行われたものか、あるいは特定目的により取得されたものかを区別せず、取得した自己株式の保有期間に関する別段の制限を設けていません。また、原則として取締役会において、自己株式の処分相手や処分方法に制限なく処分できるよう規定しています(商法第342条)。
一方、上場会社には自己株式の取得及び処分に関連して「資本市場及び金融投資業に関する法律」(以下「資本市場法」)上の特例規定が適用され(資本市場法第165条の2第2項)、上場会社は自己株式の取得を取締役会の決議だけで行うことができ(資本市場法第165条の3第3項)、信託契約を通じた自己株式の間接取得も認められています(資本市場法第165条の3第1項第2号)。
2. 改正商法の主要内容①:自己株式の法的地位の明確化
自己株式の法的地位に関しては、従来「未発行株式説」と「資産説」が対立していましたが、改正商法は立法により「未発行株式説」を採用し、自己株式にはいかなる権利も認められないことを明示しました。これに伴い、① 自己株式を交換または償還の対象として社債を発行すること(改正商法第341条の3第2項)② 自己株式を質権の目的とすること(改正商法第341条の3第3項)③ 会社の合併・分割時に自己株式に対して新株を割り当てること(改正商法第529条の2及び第530条の13)がいずれも禁止されます。
3. 改正商法の主要内容②:自己株式の消却義務化
会社が自己株式を取得した場合、原則として取得日から1年以内に消却しなければなりません(改正商法第341条の4第1項)。上場会社が信託業者をして自己株式を間接取得させた場合、信託業者が自己株式を取得した日を上記の取得日とみなします。信託業者は信託契約の存続期間中に自己株式を処分することができず、信託契約の終了または解約後、遅滞なく会社に自己株式を返還しなければなりません(商法第542条の16)。
改正商法の施行前に取得した自己株式についても、消却義務が適用されます。すなわち、既存の直接取得による自己株式の場合は、原則として改正商法の施行日から6か月が経過した日から1年以内に、上場会社が信託契約に基づき受託者の名義かつ会社の計算で取得した既存の間接取得による自己株式の場合は、改正商法の施行後、会社が受託者から返還を受けた日から1年以内に消却しなければなりません(附則第2条第1項)。
ただし、自己株式の消却によって他の法令上の外国人持分制限に関する規定に違反することになる場合は、改正商法の施行日から3年以内に処分できるよう、拡大された猶予期間が設けられています(附則第2条第2項)。
4. 改正商法の主要内容③:例外的な自己株式の保有・処分が認められる事由の規定
改正商法によれば、会社が取得した自己株式は義務的に消却しなければなりませんが、例外的に以下のような場合であって、会社が「自己株式保有処分計画」を作成し、株主総会の承認を得たときには、自己株式を保有または処分することができます(改正商法第341条の4第2項)。自己株式保有処分計画には商法が定める一定の事項を記載し、取締役全員が記名捺印または署名しなければなりません(改正商法第341条の4第4項)。
• 会社が各株主に対し、その持株数に比例して均等な条件で処分する場合
• 会社がストックオプションを付与するなど、役職員の報償目的で活用する場合
• 会社が「勤労福祉基本法」に基づき、従業員持株購入選択権を付与するなど、従業員持株制度実施の目的で活用する場合
• 会社が株式の包括的交換、株式の包括的移転、合併など、法令で定める目的に従って活用する場合
• 会社が新技術の導入、財務構造の改善など、会社の経営上の目的を達成するために必要な場合であって、株主総会の特別決議により定款にその事由を規定した場合
特に、会社が自己株式を継続して保有または処分しようとする場合、毎年「自己株式保有処分計画」の承認を受けなければならない点に留意する必要があります(改正商法第341条の4第3項)。また、上場会社の場合、株主総会の承認なく自己株式を取得日から1年以内に消却しなかった場合、または自己株式保有処分計画に違反して自己株式を保有・処分した場合には、取締役、監査役、監査委員等に対し、5,000万ウォン以下の過料が科される可能性があります(改正商法第635条第3項第9号、第10号)。
5. 改正商法の主要内容④:自己株式の処分に対する新株発行規定の準用明示等
改正商法は、会社が株主総会で承認された「自己株式保有処分計画」に基づき自己株式を処分する場合、商法上の新株発行に関する規定を、自己株式の性質に反しない限度で準用するように定めています(改正商法第342条第4項)。また、自己株式を各株主が均等な条件で取得できるよう処分することを原則としつつ(改正商法第342条第1項)、一定の場合(役職員の報償目的、従業員持株制度の実施、株式の包括的交換・移転・合併等への活用、定款に基づく経営上の目的達成に必要な場合)には、株主以外の者に自己株式を処分できることとしました(改正商法第342条第2項)。
従来、裁判所は自己株式の処分に新株発行規定を類推適用できないという立場をとっていたため、経営権紛争の状況下で自己株式を処分して「友好持分」を確保することが可能でした。しかし、改正商法の下では、明確な経営上の目的がない限り、第三者に自己株式を処分することは困難になるものと考えられます。
6. 改正商法の主要内容⑤:自己株式の消却手続の簡素化
自己株式の消却に関し、従来の実務では、上場・非上場会社を問わず、配当可能利益の範囲内で取得した自己株式の消却は取締役会の決議のみで可能でしたが(商法第343条第1項但書)、特定目的によって取得した自己株式の消却は、資本金の減少に関する規定に従い、株主総会の特別決議(商法第438条第1項、第434条)及び債権者保護手続(商法第439条第2項、第232条)を経る必要があるものとして運用されてきました(商法第343条第1項本文)。そのため、特定目的により取得した自己株式の消却には、手続上の煩雑さがありました。改正商法は、会社が取得した自己株式が配当可能利益の範囲内で取得されたものか、あるいは特定目的により取得されたものかを区分せず、いずれも取締役会の決議によって消却できるよう規定し(改正商法第343条第1項但書)、自己株式の消却手続が簡素化されました。
7. 自己株式消却義務化の波及効果と示唆
自己株式を保有している会社は、上場・非上場を問わず、自己株式の消却義務化に対応するための戦略を策定する必要があります。すなわち、既存の保有自己株式の消却、例外事由に基づく保有・処分の可能性、その他の活用案を全面的に検討し、取締役会及び株主総会の手続、会計・税務上の処理方案などについて事前に備えておくことで、法的・実務的なリスクを最小限に抑えることができます。
特に、自己株式をベースとした交換社債(EB)の発行、これを担保とした融資、デリバティブなどの金融取引は、法令上認められる範囲が縮小し、要件・手続が強化されるため、既存のスキームを維持することが困難になる可能性があります。法令に規定されていない目的で自己株式を処分することは原則として禁止されるため、これまでそのような目的で自己株式を保有していた会社は、財務戦略の空白を埋める代替案の樹立が求められます。
自己株式の消却は、株式数を減少させることで自己資本利益率(ROE)や1株当たり純利益(EPS)などの各種投資指標を改善させ、株主還元の面では肯定的に機能すると見込まれます。しかし、大量の自己株式を保有している企業の場合、消却によって利益剰余金などの自己資本項目が減少するため、主要な財務比率が変化する可能性があります。また、自己株式の処分を通じた流動性の確保は、例外事由及び株主総会の承認などの要件下で限定的にのみ可能となるため、キャッシュ・フロー管理戦略を再整備する必要があります。
また、自己株式を会社の経営上の目的に活用しようとする場合、定款にその事由を具体的に規定しなければならないため、各会社に適した内容に定款を変更する必要があります。さらに、「自己株式保有処分計画」について株主総会の承認を得るためには、株主総会での議決権の確保が必要なため、会社は株主の支持を得るために、自己株式保有処分計画を誠実に作成し、株主と積極的にコミュニケーションを図るべきであり、前向きな株主還元方針とともに、必要に応じて議決権代理行使の勧誘(委任状勧誘)を活発に行う必要があると予想されます。
一方で、改正商法の施行後も、いくつかの解釈上の争点が残されています。まず、自己株式を保有・処分できる事由である「会社の経営上の目的」がどの範囲まで認められるのか、検討が必要です。また、自己株式を均等な条件で処分する場合、新株発行に関する規定が準用されますが、具体的な処分方法をどのように実現すべきかについては不明確な部分があります。最後に、自己株式保有処分計画に記載すべき内容のうち、自己株式の保有または処分の目的をどの程度具体化し、確定させて記載すべきかについても、慎重な検討が必要です。
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